スタッフ通信
医食同源の話
今回は医食同源という言葉に係わるテーマでお話しさせていただきます。医食同源という言葉を聞いたことがあるという人は多いと思いますが、「食べ物と薬とは源を同じくするもので、どちらも体の調子に影響を及ぼすことができる」という意味です。
最初に紹介するのは、日本人における乳製品摂取と死亡リスクとの関連を調べた研究で、慶応義塾大学の宮川尚子氏らによりJournal of Atherosclerosis and Thrombosis誌オンライン版に掲載されました。解析対象は、がんや循環器疾患の既往がなく、乳製品摂取情報がある7万9715人(女性57.2%、平均年齢54.7歳)で、乳製品の摂取量により多い、普通、少ないの3群に分け、がんや循環器疾患による死亡リスクが検討されています。これによると追跡期間中央値12.4年で3723例が死亡し、そのうちがんによる死亡が2088例(56.1%)、心血管疾患による死亡が530例(14.2%)でした。男性では、ヨーグルトの摂取量が最も多い群では、最も少ない群より全死因死亡リスクが低く、女性では、乳製品摂取量と全死因死亡リスクとの間に逆相関が認められました。これらの結果から、研究グループは「女性の乳製品摂取量の多さおよび男女のヨーグルト摂取量の多さは、12年間の追跡調査において全死因死亡リスクの低下と関連し、少なくとも日本人が日常的に摂取している程度の乳製品は健康的な食生活に寄与する品目として推奨できるとしています。
次に紹介するのは、TeramotoらによりJ Am Heart Assoc.に掲載された研究で、ベースライン時に40~79歳で、生活習慣、食事、病歴に関する質問票に回答した1万8609人(男性6574人、女性1万2035人)を追跡期間中央値18.9年間追跡調査した報告です。参加者を正常血圧・正常髙値血圧・1度高血圧・2-3度高血圧の4群に分類し、コーヒーならびに緑茶の摂取量と心血管疾患(CVD)との関連を調査したもので、2-3度高血圧がありコーヒーを一日2杯以上飲む人でコーヒー摂取とCVD死亡リスクの増加との間に関連を認めています。一方、緑茶の摂取とCVD死亡リスクとの間にはどの血圧群との間にも関連を認めなかったとのことです。コーヒーに関しては過去に女性でコーヒーを一日3杯以上飲む人では大腸がん発症のリスク低下が認められるとの報告もあり、ターゲットを何に絞るかによって結果に差が出るようですが、何れにしても「過ぎたるは及ばざるがごとし」で健康に良いと聞いたからといって一つのものを摂り過ぎるのは良いとは言えず、バランスの良い食事内容を心掛けるのが何より大事なことだと思います。
このように食事は我々の健康に大きく影響しており(医食同源)、ただ空腹を満たすためだけの食事では無く、普段から食事の量や内容にも気を配りたいものです.
消化器内科 光永 篤