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高齢者に多い「弛緩性便秘」とは?

今回は最近の高齢化社会を反映して相談に来られる方が多くなった「便秘」についてお話しします。まずは以下のグラフを見てください。

このグラフから判る通り、加齢に伴って男女とも便秘に悩む人が増えています。一般に女性は、女性ホルモンの影響で若い頃から便秘がちで、便秘に対しある程度耐性がありますが、男性は若い頃は便秘をすることが少なく、便秘に対する耐性がない分、高齢になって急に便秘がちになり、深刻になられる方も多いようです。このような高齢者に多く見られる便秘を弛緩性便秘と呼びますが、高齢になるほど便秘になり易くなる原因は、やはり加齢に伴う身体機能の衰えが原因です。便通を促す要因には、①大腸の蠕動運動が保たれ②便に適度な水分があり③直腸に到達した便により便意を感じられることの3つの要素が大切とされています。しかし、加齢に伴う筋力の低下により①の蠕動運動が弱くなり、これにより大腸内の便を肛門に向かって押し出すのに時間が掛かり、大腸内に便が長く止まることで、便から過分な水分が吸収されて②の適度な水分が不足します。また、漸く便が肛門近くに達しても、便秘を繰り返すうちに③の直腸で便意を感じる知覚が弱くなり、排便行動に繋がらないうちに便秘が助長されるという悪循環に陥ってしまうのです。

以上のことから、高齢になるほど生理的に便秘になり易くなることはご理解頂けると思いますが、そこで便秘を回避する方策として、まずはこの悪循環を断ち切る必要があります。

①に対してはよく言われるように適度な運動と蛋白質の摂取により、筋力を維持することが大切です。②に対しては、加齢により喉の渇きを感じる知覚も弱くなりますので、意識的に毎日決まった量の水分を摂るよう心掛けます。③に対しては、一日の中でトイレに長く座っていられる時間を決め、便意があっても無くてもその時間になったら毎日トイレに行き、お腹をマッサージしながら腹圧を掛けて排便を行う努力を重ねます。これにより、排便が習慣化されれば、便秘の悪循環を断ち切ることができるようになります。さらに、人には胃・直腸反射という機能が備わっていますので、トイレに入る前に胃を刺激する目的で、冷たい水か牛乳を飲んで頂くと、なおさら便意が出やすくなりますので、試してみてください。また、少しでも便意を感じたら、外出中であってもすぐにトイレを探して行くことが大切です。尿意と違って便意というのは我慢をしているとすぐに消えてしまい、そこから便秘が始まることもよくあります。それでも便秘を克服できないときには、当然、便秘薬を服用し頂く必要がありますので、クリニックの医師にご相談して頂ければと思います。