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高血圧を予防する歯磨き効果

最近の研究から、重度の歯周病がある方は、高血圧の発症リスクが大幅に高くなる可能性が示されました。

 

英国・ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)イーストマン歯科研究所のFrancesco D’Aiuto氏らの報告 Hypertensions誌の2021年3月29日号掲載

対象は、重度の(歯の50%以上に歯肉感染が認められる)歯周病のある成人250人(歯周病群)と、歯周病のない250人(対照群)。収縮期血圧が140mmHg以上の人の割合は、歯周病群が14%、対照群が7%であり、2倍の差が見られた。また、収縮期血圧/拡張期血圧が130/80mmHg以上の場合を高血圧と定義すると、歯周病群の約50%、対照群の約42%がこれに該当した。

血圧に影響を与え得る因子(年齢、性別、BMI[体格指数]、喫煙・運動習慣、人種/民族、心血管疾患家族歴)を調整後、歯周病群は対照群に比べて、収縮期血圧が3.36mmHg、拡張期血圧は2.16mmHg統計学的有意に高かった。歯肉出血や歯周ポケットの深さなどから判定した歯周病の重症度と、収縮期血圧が正相関し、収縮期血圧140mmHg以上の割合は歯周病群が対照群の2.3倍だった。さらに、歯周病群は対照群に比較して、血糖値、LDL(悪玉)コレステロール、炎症レベル(高感度CRP、白血球数)が高く、HDL(善玉)コレステロールは低いことも分かった。

歯科医が高血圧のスクリーニングを行い、必要に応じてプライマリケア医に紹介し、かつプライマリケア医は歯周病のスクリーニングを行い、必要に応じて歯科医に紹介することで、高血圧に伴う合併症が抑制され、患者の健康上のメリットにつながる。1日2回歯を磨くなど基本的な口腔衛生が、歯周病の予防に極めて効果的であることが証明されている。われわれの研究結果は、そのような基本的口腔衛生戦略が高血圧予防においても、強力かつ容易なツールになり得ることを示している。

循環器内科 赤嶺 靖裕