熱中症を予防しましょう

年々、夏季は猛暑となり、全国いたるところで熱中症が発生しています。昨年も全国各所で真夏日や猛暑日が記録されており、熱中症で救急搬送される方が多くなっています。また、今夏も猛暑が予想されており、十分な予防対策が必要です。
 

1.熱中症の統計は?
令和7年は、気象庁による統計開始以降、多くの地方で最も早い梅雨明けとなったほか、夏の日本の平均気温が最も高くなりました。また、熱中症警戒アラートの発表回数が過去最多となるなど、非常に厳しい暑さが長期間にわたって続きました。5月から9月までの全国における熱中症による救急搬送人員の累計は100,510人となり、調査を開始した平成 20 年以降で、最も多い搬送人員となりました。また、例年と比べて、6月、9月にも多く見られるようになっており、熱中症発生が長期間にわたっています。
全国の熱中症による救急搬送状況の年齢区分別、初診時における傷病程度別及び発生場所別の内訳は、年齢区分別では、高齢者が最も多く全体の約57%、初診時における傷病程度別では、入院が必要な中等症・重症が約36%、発生場所別では、住居(約38%)が最も多く、次いで道路(約20%)、駅(屋外、ホーム)等の不特定者が出入りする屋外の場所(約12%)、道路工事現場・工場・作業所等の仕事場(約11%)の順となっています。高齢者だけでなく、18歳以上65歳未満の成人が33.9%を占め、死亡者・重症者(3週間以上の入院が、高齢者以外でも多く見られるようになっています。
 


 

2.熱中症の病態は?
体温が上がると、体は2つの方法で熱を下げようとします。一つは、皮膚の血管を広げて血流を増やして熱を外に逃がそうとしますが、周りの気温が高いと熱を逃がすことができません。もう一つは、汗を蒸散させて、熱を空気中に逃がそうとします。汗は皮膚の汗腺から分泌され、水分と塩分が含まれています。汗が少量のときは、汗腺の中で塩分が再吸収されるので、その成分のほとんど水分のみですが、大量の汗が分泌されるときは、塩分の再吸収が間に合わなくなり、汗から塩分が喪失します。そのため、多量の汗をかくと、水分だけでなく塩分も不足します。したがって、熱中症の病態は高体温、脱水と塩分不足です。
 

3.熱中症になると
血液中の水分が喪失すると、血液は濃く(浸透圧が高く)なります。血液の浸透圧が高くなると、脳(視床下部)にある口喝中枢が刺激され、のどは渇きます。同時に脳(脳下垂体)から抗利尿ホルモンが分泌されて腎臓に作用して水分を再吸収するので、尿量が減ります。一方、最低限の老廃物は尿に排泄されるので、色の濃い尿となります。

高体温になると体内の重要な臓器の温度上昇により、全身の倦怠感(だるさ)や頭痛、吐き気といった症状が現れます。脱水になって血液の流れが悪くなると、血圧は下がり、めまいや立ちくらみ、もうろうとなり、重症だと気を失うこともあります(熱失神)。

血流の不足を回数で補うので、心拍数(脈拍数)が多くなります。筋肉も血流減少に弱く、塩分の不足が追い打ちをかけるので、全身の筋肉痛やしびれ、こむら返りがおこるようになります。
いつもと違う、体がだるい、気持ちが悪い、などと感じたら、熱中症の可能性があります。頭痛、吐き気、ぐったりした感じで力が入らないというのは、緊急事態であり、救急車を呼ぶ必要があります。
 

4.「熱中症警戒アラート」と「暑さ指数(WBGT)」
2025年は猛暑で、全国いたるところで「熱中症警戒アラート」が発表されました。「熱中症警戒アラート」は、危険な暑さへの注意を呼びかけ、 熱中症予防のための行動を促すための警報です。
令和2年度から環境省と気象庁が連携して、より効果的な予防行動へと繋げるために情報提供されるようになりました。
この警戒アラートを発出する根拠とされるのが、「暑さ指数」です。「暑さ指数」は1954年に米国で提唱された指標です。米国ではWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)と呼ばれており、熱収支(人体と外気との熱のやりとり)に影響の大きい、①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)、 ③気温、の3つの要素を取り入れて算出されます。具体的には、
① 湿球温度(温度計の球部に水で湿らせたガーゼを巻いて測る)、
② 黒球温度(温度計の球部を黒色に塗装された直径15㎝の薄い銅板の球の中心において測る)、
③ 乾球温度(通常に測る)
の3つの温度から、その割合を7:2:1にして算出します。すなわち、WBGTは、湿度の効果7:輻射熱の効果2:温度の効果1の割合で表されているのです。気温と同じように摂氏度(℃)で示されるので、気温と混同しやすいので注意が必要です。ちなみに、環境省のHPなどでは単位を省略しています。

注目してほしいのは、WBGTに占める湿度の割合が高いことです。同じ温度でも、湿度が高いと汗が蒸発(放熱)しにくくなり、高温になった体温が下がらず熱中症にかかりやすくなるからです。
気温35℃で湿度が35%ならWBGTは27ですが、同じ35℃でも湿度が70%ならWBGTは33になります。ハワイと東京の夏の違いで理解いただけると思います。
WBGTが28超えると熱中症の発生率が急増し、31を超えると日常生活で高齢者は安静にしていても危険、運動も原則禁止になります。熱中症警戒アラートは危険の目安をこえる33以上が予想されるときに発出されます。熱中症を予防するためにも暑さ指数(WBGT)に関心を持ちましょう。環境省の熱中症予防サイトで、すぐに調べることができます。
 

5.熱中症を予防するために
熱中症を予防するための第一歩は暑さならしです。日本気象学会は、真夏になる前に、「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる運動を1日30分、週に5日程度行い、運動直後に牛乳をコップ1-2杯の飲むことを推奨しています。中高年であれば、3分間の速歩(大股で腕を振り、かかとで着地)と3分間のゆっくり歩きの繰り返しを1日5回、週4回以上、4週間続けるのが良いとしています。血液量が増え脱水になりにくくなる一方、汗が出やすくなって体温が上昇しにくくなります。
熱中症の時期になれば、気象情報を頻回に確認し、暑さ指数を参考にして活動を控えることです。それでも、活動するときには細心の注意が必要です。
熱中症の本体は、高体温、脱水、塩分不足ですから、予防には体温上昇の抑制と適切な水分および塩分の補給が重要です。
屋外での移動はなるべく日陰を選び、日傘を使って、少しでも熱ストレスを緩和しましょう。屋内にいても熱中症になることがあります。気温を確認し、扇風機やエアコンを使って温度調整をしましょう。
暑い中で活動するときには、基礎体力や当日の体調など、自分自身の状態を注意深く観察したうえで活動しましょう。高温環境下での身体活動の原則は、「頻繁な休憩と水分補給」と「絶対に無理をしない、頑張らない」です。
喉(のど)の渇きと尿量あるいは排尿回数の減少、濃い尿は、脱水が進んでいるサインです。 十分な水分補給が必要です。定期的な水分補給も必要です。特別な活動をしていなくても、就寝前、起床時、入浴前後にコップ1杯(約200mL)程度、日中は定期的(1時間ごと)にコップ半分(100mL)程度の水分補給をしましょう。
高齢になると暑さや水分不足に対する感覚も鈍くなり、暑さに対する調整機能も低下します。 独居の高齢者が身近にいる場合は、頻回の連絡、声掛けなど十分に注意してあげてください。
厚生労働省では、分かりやすい熱中症予防のリーフレットを作成(QRコード)しています。簡単な応急処置も紹介していますので、日頃からチェックしておきましょう。
 


 

一般財団法人ライフ・プランニング・センター 理事長 山科 章

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