スタッフ通信
認知症の予防に役立つ食事とは?
高齢化率の世界のトップ3は、日本(28.6%)、ドイツ(21.7%)、フランス(20.8%)ですが、高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。勿論、誰も好き好んで認知症になるわけではありませんが、誰もが年を取ることは避けられず、認知症のリスクも避けては通れない事実としてあるわけです。
認知症は脳の血流障害に伴う脳細胞の死滅が影響していますが、脳の血流障害の原因となる動脈硬化を引き起こす要因として活性酸素の存在があります。活性酸素は生体を外敵から守るために細胞内に存在するミトコンドリアという器官などで産生されますが、時にこの活性酸素が自身の血管を傷つけ、動脈硬化を引き起こすことがあります。この際、活性酸素の行き過ぎた障害から細胞や血管を守る働きをするのが、果物や野菜に多く含まれるビタミンC、α-カロテン、β-カロテンなどの抗酸化ビタミンです。近年、認知症の進行を遅らせることのできる医薬が開発され、話題になっていますが、では認知症を予防する手立てはあるのでしょうか?最近、筑波大学の岸田理恵氏らが、「日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスクの関連」をプロスペクティブ観察研究としてThe Journal of Nutrition誌オンライン版に報告したので紹介したいと思います。2000~2003年(研究開始時)に50~79歳の4万2643例を対象とし、毎日の食事による果物・野菜の摂取量から抗酸化ビタミンであるα-カロテン、β-カロテン、ビタミンCの摂取量を食事摂取頻度調査票を用いて計測し、これらの対象者がその後、認知症を発症したか否かを2006~2016年の介護保険制度における認知症に係わる日常生活障害の状況を基に検討されました。その結果、4990例に認知症が認められ、これらの人で男女ともに果物・野菜の総摂取量と認知症リスクとの間に逆相関が認められた(すなわち、果物・野菜の摂取量が多い人で、認知症になる割合が少ない)とのことです。また、抗酸化ビタミンの中でビタミンCの摂取量は、男女ともに認知症リスクとの逆相関が認められたとし、このことから、「野菜や果物、ビタミンCの食事による摂取は、男女ともに認知障害のリスク低減につながる可能性が示唆された」と報告しています。
消化器内科 光永 篤