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アルツハイマー型認知症

昨年、軽度のアルツハイマー型認知症の進行予防に関する新薬(Lecanemab)の効果が医学雑誌(New England J. of Medicine,1月5日号)に発表されました。CDR-SBという認知症のスコア(問題なし0~高度認知症18)で3.1前後の軽度認知症の患者さんに、一つのグループの患者さんには実薬、別のグループの患者さんには、実薬と見分けがつかないプラセーボ(偽薬)を週2回注射しました。18か月後に実薬群ではスコアが1.21、偽薬群では1.66高くなり、統計的に意味のある差がありました。この結果は、認知症進行予防の小さな1歩であるが、まだ先は遠いと評価されています。

現状ではアルツハイマー型認知症を予防したり、進行を止めることはできません。精神科医の上田諭医師は、著書「認知症そのままでいい」の冒頭に「認知症の高齢の母親を3年間看護してきた女性が、ある時こう言われた『認知症が治らないってもっと早く知ってたら、こんなにつらくなかったのに』」と書いています。

米国の神学者ラインホルト・ニーバー(1892-1971)は、次のような言葉を遺しています。「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることができないものとを、識別する知恵を与えたまえ。」(大木英夫訳)。

アルツハイマー病の進行は止められませんが、とてもゆっくりです。もし急に何らかの精神症状が起こったら、それはアルツハイマー病によるものではなく、本人や周囲の方々のあせりや、不安、場合によっては怒りなどが関連していることが多いようです。

(一財)ライフ・プランニング・センターを設立した日野原重明は、「高齢になれば認知機能を含めて何らかの障害を持つ方が増えるのは当然です。そのような方が、生きがいを持って過ごせる社会をつくることが大切です 」と述べていました。私たちは、財団の理念「一人ひとりが与えられた心身の健康をより健全に保ち、全生涯を通して 充実した人生を送ることができるように共に歩む。」を大切にし、活動を続けています。

循環器内科 赤嶺 靖裕(クリニック所長)